東京商工会議所 | 受験者ファーストな仕組みの実現

カラーコーディネーター検定試験、ビジネス実務法務検定試験など、多様化する産業界・社会のニーズに応える検定試験を実施している東京商工会議所。同所では、2021 年度よりオンライン試験プラットフォーム「Excert」を活用し、従来の紙での試験から、IBT 方式(自宅や会社で自身のパソコンを用いて受験する試験方式)と CBT 方式(各地のテストセンターで受験する試験方式)による試験に移行している。

移行にあたっての背景や IBT 方式・CBT 方式に移行して見えたこと・今後の課題など “生” の声をキーパーソンに聞く。
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検定事業部 部長 清水 繁 氏(中央)
検定事業部 検定センター 主査 青木 陽典 氏(左)
検定事業部 検定センター 副主査 日笠 仁貴 氏(右)

導入の背景

導入の背景について、清水繁 検定事業部長は「一番は新型コロナウイルスの感染蔓延ということかなと思っています」と話す。実際に 2020 年度の上期は感染が拡大したことによって(従来の会場型で紙で受験する)試験を中止したこともあり、そのリスク回避が必要だったと語る。 検討時のことを「AI 監視というようなプレゼンも当時は受けましたが、我々としては紙の試験でやっているものを IBT という手法で対応できないか模索していた」と振り返り、検討を進める中でいくつかポイントはあったようだが「一番の決め手はやっぱり有人監視ができるというところ」という言葉をいただく。

オンラインでも公平・厳正な試験ができる

実際に運営面を担当している青木陽典 主査、日笠仁貴 副主査にもお話を伺った。

導入直後について、青木氏は「前提条件が全然違う中、従来紙でやっていたものを、パソコンを使ったオンラインの試験にしていくということで、問題の作り方、搭載の仕方や確認の仕方という裏側のところもそうですし、受験者の方の申込みのプロセスといったところも当然全て変わってきた」と語り「本当に日々課題を見つけてはそれをこう潰していく。試験運営をしていただく会社とデータミックスさんと我々と三者で密に関係を持ちながら解決していった。現場に入り込んでいただいて、実現できる体制を作っていただいたというところも、非常に感謝しているポイントだなと思ってます」と振り返る。

1 年半、試験の運営を行ってみての所感については、以下の声があった。

「我々主催団体として一番大事にしているのは公平・公正な試験の提供。安全な試験運営だけではなく、公平・公正な試験を運営するというところを大事にしているというお話をすごく親身に感じていただいた。それがあるからこそ受験者の方々の受付、実際の試験中の様子を非常にしっかり見ていただいたり、受験者の事前の準備としてこういうことが必要ではないか、といった我々に足りなかった観点もフォローしていただいた」(日笠氏)

「不正行為を拾ったところを見させていただいたんですけど、しっかり監視員の方が見つけてちゃんと報告を上げていく、機能も運用もしっかりできていて安心してお任せできるなというところはありましたし、突発的なところも社内で対応できるような形を取っていただいてるという面でも本当に安心できるなと思っています」(青木氏)

Excert では、従来のオンライン試験では難しかった「リモート試験官による遠隔監視」を実現。カンニング等不正行為の防止・発見だけでなく、会場での試験以上のきめ細やかな受験者対応が可能です。

・受験者数千〜数万人、試験官数十〜数百人に上るような大規模な運用を想定した設計
・受験者の映像と PC 画面の 2 つを共有することで、対面の試験以上の監視効果を発揮
・受験者側でのトラブル時も、ビデオ通話やチャットによるきめ細かなサポートが可能
・本人確認を半自動化する AI を実装、受付時の確認作業を省力化することが可能

受験者にとっても大きなメリット

東京商工会議所では、2021 年度に IBT 方式・CBT 方式を導入するにあたって、これまでの単一日程・一斉開始の受験形態から、受験期間を設けて期間内で受験者自らが受験する日を選択する受験形態へと大きく改革を行った。

導入時を振り返り、清水氏は「当初は紙の方がいいんじゃないかという声はやっぱりありました。IBT にすることで試験する事ができないので試験を受けるのはやめます、というような方も中にいらっしゃったのは事実であります」と話す。

「ただそういう場合に我々としてできることは、IBT・CBT はそんなに受験するにあたってハードル高いもんじゃないんだよと丁寧に説明していくこと。受験者ファースト、受験者のためにどういう環境が一番望ましいのかというところを提供していくことが務めかなと思ってます」と話すとおり、ウェブサイト上での丁寧な案内や事前にサンプル受験ができる仕組みを活用して受験者の不安を解消・低減できる仕組みを設けた。

そうした取り組みを経て実施した 2021 年度検定の受験者アンケートでは、85%の方々に非常に良い評価をいただいたといい、具体的には以下のような声があがっていた。

「ひとつ顕著な例として、従来の統一試験だと日曜日に試験をやっていたんです。そうすると小売業の企業さんとか、お店をやっているから空けれない、全員の受験は当然できませんというところがあったんですけれど、日時を選べる、平日でも試験があるというこの IBT に変わったことで、そういった企業さんが社内で検定試験を推奨していくのに非常にやりやすくなったというお声をいただいた」と青木氏も話す。

まとめ

東京商工会議所の検定試験の今後の展望について、日笠氏は次のように話す。 「東商検定は我々も非常に自信を持って提供しているサービスです。産業界に関わる方というと社会人のイメージがあると思うんですけれども、社会人なる前に学生の方だったりとかにも受けていただきたい。具体的な検定で言うと eco 検定、学生もそうですけれども、現役の社会人、セカンドキャリアの方々含めて、全ての方々に必要な SDGS の知識などが学べるような検定試験もありますので、そういったところを広く届けていくのは東商検定として今後やっていきたいと思っている。届けていく中で、紙の試験だとなかなかハードルが高かったところを、この IBT、CBT という試験方式に変わった事によって受けられるメリットを全面的に使いながら広げていきたいと思っています」

一方、今後の課題について、清水氏、青木氏が見据える点もある。

「IBT って何?とか CBT って何?というそもそも論がある。入口の部分からまだご理解されてない方、当然それは我々の PR 不足なんですけれども、そこがやっぱり届いてないんだろうなと。検定試験の中身というよりは検定試験を受けるその手段がどういうものなのかって事をきちんと我々がまだ PR しきれてないという風に感じてる部分があるので、足元ではそういう事に取り組んでいかないといけないと思っています」(清水氏)

「労働市場がこれから流動化していく中で、資格検定試験って非常に重要になってくる。我々がやってる検定試験だけで全てカバーできる訳ではないですが、例えば転職しようといった時に自分がどんなことやってきたのかを言葉で説明する以上に『こういう資格を持ってます』がこういうスキルがあるんだという事に繋がると思っています。そういう意味で検定試験といったものが、これからどんどん広がっていかないといけない。我々としてもそれぞれの検定試験のメリットや、こういうことが学べる、この資格を持っているとこういう能力があるんですということをきちんとアピールして使ってもらえるようにしていかないといけないと思っています。そういう中で IBT というものが非常に有効で、今まで以上に多くの方が受験できるキャパシティを持っていると思うので、どんどん広げていきたいですし、IBT 自体にもそういう役割というか将来性があるんじゃないかなと思っています」(青木氏)

「受験者さん向けだったり試験主催者向けに IBT 試験ってこうなんですと。サンプルで画面はこういう風になってますとかをもっともっと充実してもらえるといいんじゃないか。データミックスさんにはぜひ IBT 自体をリードする存在になってほしいなと非常に期待しています」と青木氏からは弊社に対するエールもいただいた。

今後の社会においてニーズが高まるであろう資格検定試験と IBT、これだけ大規模な実施をしながらも、目の前の課題に向き合い、今後の展望に向けて着実に足を進める東京商工会議所と共に、受験者や試験事業者にとってより良いサービスを追求していく。

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インタビュー企業の紹介

東京商工会議所

1878(明治 11)年に設立された、東京 23 区内の会員(商工業者)で構成される民間の総合経済団体。商工業の総合的な発達と社会一般の福祉の増進を目的とした活動をしており、その一環として、ビジネス実務法務検定試験などの検定試験を実施。時代の変化・ニーズに適った検定試験を通じて、人材の育成と経済社会の発展に寄与する。

東京商工会議所検定サイト:https://kentei.tokyo-cci.or.jp/